2024.03.20 家づくりの豆知識
親の農地があるから土地代は不要?家を建てるために必要になる農地転用と費用について解説します!
家を建てようとしたときには当然ですが建築のための敷地が必要となります。
通常は不動産業者から購入することになりますが、農地を持っている場合はその土地を利用しようと考える方は多いと思います。
それでは農地に建てれば土地代をおさえて安く家を建てることができるのでしょうか?
「親から農地をもらって家を建てれば土地代を浮かすことができるのでは?!」・・・実はそう簡単な話ではありません。
今回は農地に家を建てる際に必要になる農地転用と、その注意点と費用ついて解説していきます。
目次
1.農地に家を建ててもいいの?
・地目とは
・宅地とは
2.農地転用とは?
・農地法
・農地法四条
・農地法五条
3.農地転用で気を付けるポイントとは?
・農業委員会・建築課に確認する
・市街化調整区域とは
・農業振興地域制度 (農振地域)とは
4.農地転用すれば土地代金をおさえられる?
・分筆、農地転用申請費用
・造成工事
・上下水道の引込工事
5. まとめ
1.農地に家を建ててもいいの?
そもそも農地に家を建てることはできるのでしょうか?結論から言いますとその答えはイエスでもあり、ノーでもあります。
あやふやで申し訳ありませんが、まず家を建てられる土地とそうでない土地では「地目」といったことがかかわってきます。
・地目とは
まず基本的なところからになるのですが、土地には「地目」という用途に分けた分類があります。
地目とは全部で23種類あり、登記簿謄本に記されています。
宅地・田・畑・牧場・原野・山林・塩田・鉱泉地・池沼・墓地・境内地・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝・保安値・公衆用道路・公園・学校用地・鉄道用地・雑種地とあり、その中で住宅を建築することができるのが宅地となります。
・宅地とは
宅地とは住宅、つまり暮らすための建物に使われる土地または建物に使用されている土地のことを言います。
住宅のある敷地は「宅地」でなければならず、その他の地目のままでは住宅を建築することはできません。
家を建てるために地目を宅地に変更できるのは山林、原野、農地(田・畑)、雑種地ですが、その中でも簡単な手続きでないものが農地になります。
そんな農地を宅地に変える方法が農地転用になります。
2.農地転用とは?
農地転用とは、田・畑となっている地目を宅地などに変更することです。
しかし農地は個人の所有物ではありますが、無条件で自由に宅地に地目変更をできるわけではありません。
なぜかというと農地法という法律が存在するためです。
・農地法
農地法とは、農地の権利を移す場合や転用の制限、利用についての調整や遊休農地に関する事柄を定めた法律で、耕作者の地位の安定と農業生産の増大を図り、食料の安定供給の確保などが目的となっています。
そのため農地を宅地にすることはできるものの、農業委員会や都道府県知事の許可を得る必要があります。
そのため親が所有する農地に家を建てたい、農業をやめて農地で別の事業を始めたい、農家をやめるので農地を売ってしまいたい…といったような売買や転用の許可が得られない場合もあります。
具体的に農地の売買や転用については、農地法第二章「権利移転及び転用の制限等」に記載されています。
その中で主に住宅の建築に対してかかわってくるのが農地法第4条と第5条になります。
・農地法第4条
4条で農地転用を申請する場合は、所有者が別の用途に変更する場合になります。
例えば自分の所有する農地に家を建てる、アパートや駐車場などに用途変更するといったケースですね。他にも所有者の子供が住宅を建てるためにその農地を利用する場合も含まれます。
ただ自分の土地だからといって、むやみやたらに農地を転用すると乱開発につながることや、その地域の農業事態に悪影響を及ぼすことがあるため許認可が必要となっています。
・農地法第5条
5条で農地転用を申請する場合は、住宅や商業施設のための土地など農地以外のものに転用するため「売却」する場合となります。
住宅関係で一番なじみのある農地転用ではないでしょうか。例を挙げると農地を何区画かの分譲地とするケースが代表的ですね。
不動産情報を見た時に地目が田や畑になっている複数区画ある分譲地を見た方がいらっしゃると思いますが、その場合は不動産業者が農地転用の許可を取って販売しているケースが多く、その場合は農地転用の手続きを取る必要はありません。
逆に単独の敷地で地目が農地になっている場合は自分で農地転用・上下水道の引き込み・造成工事なども行い費用も負担しなければいけないこともありますので、物件情報をよく確認して買主負担なのか売主負担なのかをきちんと把握しましょう。
3.農地転用で気を付けるポイントとは?
それでは住宅を建てるために農地転用を行う際に注意しておかなければならないポイントは何なのでしょうか?
・農業委員会や建築課に確認する
「農業委員会は、農地法に基づく権利移動の許可、農地転用案件への意見具申など、農地法等の法令に基づく事務、農地等の利用の最適化の推進(担い手への農地の周生期・集約化、遊休農地の発生の防止・解消、新規参入の促進)に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。」
まず、農地転用の申請を行えば必ず転用できるというものではありません。
地域として宅地への転用が認められにくい場合があります。
具体的には市街化調整区域内や農業振興地域整備計画に基づいて定まられている土地があげられます。
・市街化調整区域とは
市街化調整区域とは、市街地としての開発をせずに建築物などを抑制する地域です。端的にいうと建物を建てることが推奨されない地域で、田園風景など現在の環境を維持して乱開発を防ぐよう定められた地域です。
逆に人が住む場所として積極的に開発などを行う地域を市街化区域といいます。
人が暮らす環境を推進しているため市街化区域内の農地転用は比較的認められやすくなっています。
他にも注意すべき点があり、それが農業振興地域制度(農振地域)です。
・農業振興地域制度(農振地域)とは
農業振興地域制度の概要とは「自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域について、その地域の整備に関し必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とする。」とあります。
ものすごく簡単にまとめますと「農地として利用すべき地域」であるということです。
今後相当期間にわたって農業振興を図る地域のため、宅地など別の用途の使用は厳しく制限されており、都道府県知事の許可が必要となります。
住宅を建てられるケースもありますが、農家の後継ぎが暮らすための家を建てるなど条件が厳しく、農地転用の前に農用地区域から除外する「農振除外」の手続きをする必要があります。
許可が下りないこともありますし、許可が下りるにしても農振除外の手続きに1年以上時間がかかることもあります。
農業振興地域は不動産業者が取り扱っていることはほぼありませんが、親から土地を譲ってもらって家を建てようと考えるのであれば、市街化調整区域と農振地域は真っ先に確認すべきですね。
住宅の新築のために土地を探していると様々な情報を目にすると思います。
この松本市や安曇野市の売地を見てみると、利便性を考えると地域にもよりますが900万円~1300万円程の敷地が多いように感じます。
それに加えて登記費用や不動産業者の仲介手数料などの諸経費も必要になる場合がありますので、「親の農地を譲ってもらう、または農地を安く買って農地転用すれば分譲地を購入するよりも安上がりなのでは?!」と思うこともあるのではないでしょうか。
現実的に農地を宅地に変えた方が土地の費用は押さえられるのでしょうか?
家を建てられる敷地にするためにはどのような費用が必要になるかをご説明させていただきます。
・分筆・農地転用申請費用
農地転用を検討した際には対象の農地すべてを宅地に変えるのではなく、農地の一部分を分割して転用することがよくあります。
地域の条例や条件にもよりますが、転用できる面積には上限があり、原則として住宅建築目的の農地転用の上限は500㎡とされています。
例えば松本市▲▲100番地だった敷地を農地の松本市▲▲100番地-1と宅地にするため分割した100番地-2を分筆して、こちらの方に農地転用の手続きを行うことになります。
その際には土地家屋調査士による測量を行い、土地の境界にかかわる所有者や市の担当者などが立ち合い境界を確定するのですが、農地転用の申請費用なども含めて50万円程は費用がかかると思われます。
・造成工事
土地を分筆して農地転用の手続きを行えば家が建てられるかというとそうでもありません。
元々農地だったため土が建築向きではないため土の入替工事や、道路からの高低差がある場合は盛土やそれに伴う擁壁の工事などを必要となります。
このような住宅建築のために必要な環境を整える工事を「造成工事」といいます。
また盛土を行ったことで建物の荷重に耐えられない場合もありますので、その場合は地盤改良工事を必要とする場合もあります。
面積や工事内容にもよりますが数百万円単位での費用がかかります。
・上下水道の引込(本管取り出し)工事
家が建てられるように土などを入れ替えても、上水道や下水道が来ていなければ生活することができません。
一般的な売地や分譲地は宅内に上下水道が引き込み済みになっているのですが、もともと田・畑だったところに引き込まれてはいないと思います。
その場合、一番近い上下水道管まで道路を掘削して、宅内まで新しく配管を敷設してこなければいけません。
こうした工事を「本管取り出し工事」といいます。
土地の前面道路に上下水道の管が通っている場合はまだいいのですが、場所によっては100m以上にわたって工事をしなければいけない場合もあります。
当然その距離によって施工費用は大きく変わってきますので、事前に上下水道が近くまで来ているかを確認したうえで転用を検討することをお勧めします。
5.まとめ
条件はありますが、農地を宅地に転用して住宅を建てるというのも選択肢の一つではあると思います。
しかし必ずしも「親の農地に建てれば、土地を購入しなくていいから安く済む」という訳ではありません。
農地転用を検討するのであれば、事前に転用が可能かだけでなく上下水道管の位置や盛土や擁壁などの造成工事の費用も見据えて計画を立てていくことが大切になります。
もちろん市街地の中の農地の場合はどこかの分譲地を購入するよりも安く土地を確保することができますので、農地転用にも詳しい建築業者などに相談してみるのもいいと思います。
こうした相談を投げかけることで明確な答えが返ってくるか、要領を得ない答えが返ってくるかで安心して任せられる住宅会社を見極めていくこともできるでしょう。
少し時間のかかる流れになりますので、ワンテンポ早く行動することをお勧めいたします。
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農地転用で建築した実績もあり平屋・2階建て、二世帯住宅など、あらゆるご要望にお応えします。
建築業者から見た土地のアドバイスに加え、ファイナンシャルプランナーとしての住宅ローンのご相談も同時に受け付けておりますので、まずはご相談ください。
この記事を書いた人
児玉 忠(注文住宅ハウスアドバイザー/ファイナンシャルプランナー)
中学生と小学生の2児の父で45歳、新卒時から23年間にわたり注文住宅のハウスアドバイザー一筋で、100棟以上の新築住宅のお客様をお手伝いしている。
ファイナンシャルプランナーでもあるため、住宅ローンの資金計画などを含めた総合的な提案を行っている。