2024.02.20 家づくりの豆知識
意外と身近なシックハウス症候群?新築の家で快適に暮らすポイントを解説します。
毎日家族が過ごす住まいでは、室内の空気環境はとても重要です。
人体が一生涯で摂取するものは何かご存じでしょうか?実は室内の空気が57%で最多といわれています。
人生で半分以上過ごす家の空気が汚れていては健康にいいはずがありません。
だからこそ「シックハウス症候群」のような疾患が問題となりました。
今回はそんなシックハウス症候群や身近に起こる空気汚染と、快適に暮らすためのポイントを解説させていただきます。
目次
1.シックハウス症候群とは?
2.シックハウス症候群と症状とは?
3.意外に身近な空気が汚れる原因は?
・ダニアレルギー
・室内のダニ対策
4.石油ファンヒーターでどれほど空気が汚れるか
5.テストの結果から読み取れること
6.換気の重要性
・人による空気汚染の低減
・脱臭
・防塵(除塵)
・除湿(排湿)
・室温の調整
・人以外による汚染空気の低減
7.24時間換気とは
8.まとめ
1.シックハウス症候群とは ?
「シックハウス症候群」とは「室内の空気が汚染されることによって引き起こされるさまざまな健康障害の総称」とされています。(シックハウス診断士協会)
以前はよく「新築病」だとか「化学物質アレルギー」などと一言で片づけられていましたが、実はそんなに単純なものではありません。
確かに最も大きな原因は建材や家具などから放散される化学物質で、VOC(揮発性有機化合物)と言われます。
色々ありますがホルムアルデヒドが有名でしょうか。
しかし、単に新建材に含まれる化学物質によって・・・というだけではなく、多種多様な要因が複雑に絡み合って引き起こされるのがシックハウス症候群なのです。
2.シックハウス症候群の症状とは?
シックハウスハウス症候群の代表的な症状はどういったものがあるのでしょうか?
- 頭の症状…頭が痛い・ボーとする・偏頭痛・興奮・めまい・眠気・記憶力の低下・集中力の低下
- 目の症状…目の痛み・かゆみ・涙が止まらない・充血・目がチカチカする
- 鼻の症状…鼻水・鼻づまり・鼻時・においに敏感になる
- 耳の症状…耳鳴り・平行感覚の異常
- 口の症状…口が乾く・味が分からない
- のどの症状…せき・くしゃみ・喘息・のどの痛み
- 心臓の症状…不整脈・動悸
- 胃の症状…吐き気・食欲不振
- 肌の症状…蕁麻疹・湿疹・肌荒れ・乾燥肌・かゆみ
- 腸の症状…下痢・便秘
- 足の症状…足先のしびれ・こむら返り
これらの内容を見ると日常でも起こりえる症状ですが、シックハウス症候群の厄介なところは個人差が大きいところでしょう。
人によって症状が異なり、自律神経失調症や更年期障害、時には風に間違えられることも多く、「原因が分からないんだけど、なんか体調が良くないなぁ」といったように本人だけにしか症状が分からない場合もあります。
3.意外に身近な空気が汚れる原因は?
先ほどのVOC(揮発性有機化合物)によるものだけをシックハウスの原因とする向きもありますが、室内の空気汚染の源は化学物質だけではありません。
その代表的なものがダニです。
・ダニアレルギーとは
ダニの死骸やフンに含まれるたんぱく質がアレルギーの原因となり、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎など様々なアレルギー性疾患を引き起こします。
スギ花粉などをアレルゲンとするアレルギー性鼻炎は季節性ですが、ダニなどのハウスダストを玄とするアレルギー性鼻炎は、年間を通じて症状が現れます。
・室内のダニ対策
室内も様々なダニ対策を行うことで、アレルゲン回避を行うことができます。
掃除への意識はもとより、ダニが好む湿気への対策が必要になります。
ダニ以外にもハウスダストによって引き起こされるアレルギーもありますので、掃除や換気などの対策を行いましょう。
これらがアレルギー等の原因となることは周知のとおりですが、広い意味ではこれらもシックハウス症候群と言えます。
それ以外にも室内空気汚染の原因はハウスダストやカビ、タバコにストーブの煙など・・・様々なものがあります。
4.石油ファンヒーターでどれほど空気が汚れるか?
石油ファンヒーターは冬場の居間などの暖房機器として最もよく使われており、やけどや一酸化炭素中毒にも注意が必要な暖房器具です。
それだけでなく、呼吸器に悪影響を及ぼす窒素酸化物や、最近ではいわゆるシックハウス症候群や化学物質過敏症といった問題から注目されるようになった揮発性有機化合物(VOC)についての関心も高くなっています。
石油ファンヒーターによる室内空気汚染のテストは換気扇などの設備がない一般的なプレハブ住宅の6畳洋室の部屋を使って行われました。
プレハブ住宅の外気温を5℃、湿度を50%にして、部屋の窓や扉をしめ切って石油ファンヒーターを使用し、設定温度の血が、最大暖房出力の違い(暖房の目安として木造9畳までの)による室内空気の汚染の程度とその時間による推移を調べています。
また途中で換気した場合の改善効果についても調べました。
◆使用した石油ファンヒーターの銘柄
◆設定温度を20℃にして使用した場合
運転を開始すると二酸化窒素の室内濃度は急激に上昇し、健康保護のための目安となる濃度(短時間の場合は0.1~0.2ppm)を10分程度で超えて上昇し続け、30分後には0.5~0.8ppm前後にまで達した。
3銘柄とも運転開始(点火後)から急激に濃度が上昇し、0.1~0.2ppmを10分前後で超えた。その後も上昇し続け、30分後には0.5~0.8ppm前後にまで達し、30分後あたりからは上昇が緩やかになった。
室内にいて頭痛や咳、目がチカチカするといったいわゆるシックハウス症候群問題をきっかけに、厚生労働省は揮発性有機化合物(VOC)の個別成分の室内濃度指針値やトータルとしての総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を定めている。
テストの結果、VOCの室内濃度は、銘柄により差があり、指針値を超えることはなかったが、TVOC濃度は1~1.5時間の使用で暫定目標値(400μg/m3)を超えるものもあった。
どの銘柄でもTVOC濃度は使用時間の経過とともに上昇した。運転開始から30分では、全銘柄暫定目標値(400μg/m3)を超えなかったが、1時間から1時間30分では銘柄3が、2時間から2時間30分と停止後は銘柄1と銘柄3が暫定目標値を超えた。
石油ファンヒーターは長時間、日々繰り返し使うため、健康影響が懸念されますね。
◆換気の効果は
1時間に1回1分間、2箇所の窓を全開にしたところ、二酸化窒素などの燃焼ガス濃度は約4割低下し(図左)、TVOC濃度の上昇も抑えられたことから換気による空気の入れ換えは非常に有効であった。
換気なしの場合、開始から60分で濃度が0.6ppm前後まで上昇。その後も緩やかに上昇を続け、150分後には0.8ppm前後に達する。1時間に1回換気した場合、60分後換気時に0.6ppm前後から4割程度濃度が低下。その後再び上がるが、120分後換気時に0.5ppm前後から4割程度低下。
またその際に一時的な室温の低下はあるが、窓を閉めるとすぐに回復した。
換気なしの場合、開始から30分前後で20℃あたりまで上昇し、
そのまま20℃前後で持続。1時間に1回換気した場合、換気時は
約1℃の温度の低下はあるが短時間で回復。
換気時以外は、換気なしの場合とほぼ同じ室温を維持している。
5.テストの結果から読み取れること
1.締め切った部屋で石油ファンヒーターを使用すると室内空気環境は悪化するため、1時間に1~2回程度、しっかり換気しながら使用する。
石油ファンヒーターなどは湿気とともに燃焼ガスが室内に排出されるため、今夏のテストのように締め切った部屋での使用を続けると二酸化窒素や二酸化炭素などが短時間で上昇します。
長時間の使用でTVOCなどを体内に取り込んでしまいます。
2.設定温度を高くすると室内空気環境はより悪化する。
より高めの設定温度にするほど燃焼ガスや揮発性有機化合物の室内濃度が高くなり、室内空気環境は悪化しました。
3.呼吸器の弱い人や子供がいる環境ではほかの暖房器具の検討を。
石油ファンヒーターを使用すると、呼吸器への悪影響がある二酸化窒素の室内濃度が高くなる。
肺や気管支などの呼吸器が弱い人や疾患のある人、子供がいる環境では室内空気汚染が少ない暖房機器を考慮に入れて検討した方がよいでしょう。
新築住宅でも冬場は暖房が必要ですが、すき間の少ない高気密高断熱の住宅であるほど室内の空気を汚しやすい石油ファンヒーターは相性が悪いといえます。住宅メーカーなどで「暖房は石油ファンヒーターが安いし、おススメですよ」という話は聞いたことが無いと思いますが、それはこの空気汚染が原因です。
6.換気の重要性
この独立行政法人国民生活センター 石油ファンヒーターによる室内空気汚染のテストによって室内の空気汚染に対して換気が有効であると結果が出ました。
では、具体的に室内の空気を入れ替えることによってどのような効果が見込めるのでしょうか?
・人による空気汚染の低減
必要な空気を供給して、汚れた空気(二酸化炭素など)を排出します。
・脱臭
人間が生活していると発生する体臭や、生活臭などを速やかに排出することができます。
・防塵(除塵)
空気中に浮遊するホコリや雑菌、花粉などを排出して快適な居住空間を保つことができます。
・除湿(排湿)
人間の呼吸や燃焼器具から発生する水蒸気を排出し、結露によるカビの発生を軽減させることができます。
・室温の調整
夏の蒸し暑い夜に換気によって室内の空気を追い出し、比較的温度が低い外気を取り込み涼しくすることができます。
・人以外による汚染空気の低減
建材や家具などから発生するホルムアルデヒドなどを代表とするVOC(揮発性有機化合物)を排出して、新鮮な空気を取り込むことができる。
7.24時間換気とは?
VOC(揮発性有機化合物)等による住宅内の室内空気環境の汚染が大きな社会問題に発展して、国では2003年に建築基準法を改正しました。
大まかな内容を抜粋すると
●新築・増築にはすべての居室に換気設備が必要
●建築確認申請書に「換気回数」を記載する必要
●内装仕上げ材の制限(ホルムアルデヒド対策)
●24時間換気が可能な機会換気設備設置の義務
以上の内容があげられます。
建築基準法では0.5回、つまり2時間に1回は室内の空気が入れ替わるように風量を調整して換気計算を行う義務があります。
ちなみに、新築住宅を検討する際に、第1種換気や第3種換気といった言葉を聞いたことがあるかと思いますが、それはこの24時間換気の方式になります。
それぞれに長所・短所がありますので、新築住宅を検討する際はご自分に合った方式を採用することをお勧めします。
8.まとめ
シックハウス症候群と聞くと、ホルムアルデヒドなどの有害物質が原因で引き起こされる疾患というイメージが強いと思いますが、広い意味で考えるとVOC(揮発性有機化合物)によってのみ起こりえる事ではありません。
一般的な暖房器具による石油ファンヒーターや湿気によって発生するダニ・カビなど、意外と身近な存在によって引き起こされます。
そして健康的に過ごせる室内環境のために「換気」がとても重要になります。
ですが「換気」だけでは不十分。そこには、高断熱・高気密・冷暖房・躯体換気といったバランスも含めて家を建てることが重要ポイントとなります。
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